はじめに
先進超伝導材料と無冷媒超伝導磁石技術による強磁場研究の推進
2022年4月 センター長 淡路 智
強磁場超伝導材料研究センターは、物質・材料研究の世界的拠点である金属材料研究所の付属施設として、磁性体、超伝導体をはじめとした革新的な物質・材料の基礎ならびに応用研究の拠点として活動しています。その中心的な設備として、世界的にも5カ所にしかないハイブリッド磁石と世界的にもユニークな無冷媒超伝導磁石群および超伝導磁石群と強磁場環境下で物質・材料研究を行うための様々な実験装置を備え、大学共同利用を中心として、内外のユーザーの共同利用に供しています。特に無冷媒超伝導磁石は、ヘリウム枯渇問題や低炭素社会実現においてその威力を発揮します。また、高安定かつ高精度の実験が長時間にわたって可能であり、最近は NMRを代表に、長時間安定な磁場を必要とする実験も行われ多くの成果が出つつあります。今後、無冷媒超伝導磁石は、高温超伝導材料や高強度ニオブ3スズ材料の発展を伴いながら更なる高性能化を行ってまいります。これらの強磁場環境も利用するユーザーの方々のご協力あっての賜です。強磁場磁石の高性能化に加え、様々な実験環境の整備もユーザーの皆様と共に行ってまいります。今後ともご協力をどうぞよろしくお願いします。
強磁場超伝導材料研究センターの沿革
強磁場超伝導材料研究センターの前身である超伝導材料開発施設は,核融合炉開発研究の一翼を担う研究施設として東北大学金属材料研究所に昭和56年度(1981年度)に開設されました。中心設備は定常強磁場を発生するハイブリッド・マグネットであり,全国の国公私立大学の研究者だけでなく民間の研究者にも共同利用として供されてきました。
ハイブリッド・マグネットとは,外側の超伝導マグネットと内側の常伝導マグネットとを組み合わせて,それぞれのマグネット単独では発生できない非常に強い磁場を発生する装置です。常伝導マグネットには,数MW(メガ・ワット) 以上の大電力直流電源とジュール熱を除去するための純水による冷却設備が必要です。また超伝導マグネットもかなり大型となり,蓄積エネルギーは20MJ(メガ・ジュール) を超えます。このハイブリッド・マグネットは昭和61年(1986年)には31.1T(テスラ)という世界最高の定常磁場を記録しました。さらに,20Tまでの高均一超伝導マグネットや,世界に先駆けて本センターで開発に成功した28Tまでの無冷媒ハイブリッドマグネットや25T無冷媒超伝導マグネットも設置され、省エネルギーで高精度の実験が可能になっており、広く共同利用研究に提供されています。