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超伝導材料のひずみ効果

2017/01/10(Tue) 15:22

超伝導材料のひずみ効果

高温超伝導REBCOにおけるひずみ効果

 希土類系高温超伝導薄膜線材(REBa2CU3Oy 線材、REは希土類元素及びイットリウム)を用いて、その超伝導移転温度1)に対する結晶変形の影響を、個範囲の格子ひずみまで測定することに世界で初めて成功し、超伝導移転温度において最適な結晶構造があることを実験的に証明することに成功しました。得られた結果から、希土類高温超伝導材料は、結晶の大きさが0.385nmかつ、結晶のab面が正方形の時に臨界温度となる事が明らかとなりました。

S. Awaji et al., Scientific Reports 5 (2015) 11156.

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実用ニオブ3スズ超伝導線材の歪み効果

 多くの強磁場超伝導磁石(superconducting magnet)に用いられている実用ニオブ3スズ(Nb3Sn)超伝導線(practical Nb3Sn superconducting wire)を繰り返し曲げることで、超伝導特性の大幅な向上ができることを世界で初めて発見しました。さらに、中性子回折によって線材内部の歪みが、繰り返し曲げによって変化することが本現象の起源であることを解明しました。

 ニオブ3スズ線は、もろく少しの変形によって超伝導特性が大幅に劣化してしまうことが知られています。このため。超伝導線を使用する低温(摂氏-269度)に冷却したときに発生する熱歪みにより、超伝導特性が低下することは避けられないと考えられてきました。ところが、私たちは、実際にニオブ3スズ線を繰り返して曲げると超伝導特性がお幅に向上することを、世界で初めて発見しました。すなはち、繰り返し曲げることで線材を鍛えてトレーニングすると、本来歪みに弱いニオブ3スズ超伝導線が、これまでの定説を覆して特性を向上させるというものです。この結果は、ニオブ3スズ超伝導線を用いた超伝導機器のさらなる高性能化とコストダウンにつながると見込まれます。

S. Awaji et al., Appl. Phys., Supercond. Sci. Techn., 18 (2005)
H. Oguro et al., Appl. Phys., Supercond. 101 (2007) 103913.

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図 実用Nb3Sn超伝導線材の事前曲げ(曲げ歪み=0.8%)処理前後における (a)応力-歪み曲線と (b)臨界電流の歪み依存性